Treo650導入 -Introduction-

 PDAと言うとZaurus,パームそしてPocketPCがメジャーだ。このうち私が使ったことがないのはZaurusなので,私がPDAを語る時にはパームとPocketPC,そして過去に使った“電子メモ”というやつの経験からだ。
 私がTreo650を導入するに至った経緯を説明するにはこういう私のバックグラウンドから語った方がよいだろう。


 とはいっても,私のPDA遍歴を語ったところでおもしろくもないだろうから,PocketPCとパームを私がどのように考えたかをここでは語ろうと思う。
 まずパームは単体で機能することを目的としていると感じる一方でPocketPCはパソコンとの連携が設計思想になっていると感じた。どちらも直接入力できるが,パームが独自のファイル形式を持っていることに対してPocketPCはパソコンのファイルをそのまま持ち出していることがわかりやすいところではないか。
 この設計思想・仕様の違いは“電子手帳”をつくることから始まったパームと,WindowsをつくったMicrosoftのパソコンを外へと言う思想の違いだろう。この違いはそれぞれの初期段階にあってそれぞれの売れ行きを大きく左右した。最初からよい電子手帳をつくるという理念からつくられているので,いろいろなことを切り捨ててシェイプアップして軽快に動くパームと,設計思想云々よりもパソコンに合わせる形で高性能のハードを作るしかないような仕様になったにもかかわらず技術がそれに追いつかずに愚鈍な機械になってしまったPocketPC,と言う結果はPDAに詳しい人ならよく知っている話だ。


 ところがこの違いは後の〜現在の状況を予言していた。独自路線であるが故にハードの思想に揺らぎが出てしまうと言うこと,登場した時点である程度設計思想を体現しているが故のそれからのブレイクスルーの難しさというパームの現状と,要求ハード性能に技術が追いつきパソコンとの連携が便利でかつきびきび動くマシンが出回っているというPocketPCの現状だ。
 PDAと言うものをどう使うかは人それぞれだが,マシン単体を自分で使いこなすこととパソコンのデータを持ち出すことから始められることでは初心者にとってどちらが取っつきやすいかを考えると,言うまでもないことだろう。例えばWebからダウンロードしたお気に入りの小説をHTMLファイルのまま持ち出せるPocketPCと一度何かしらのアプリケーションで加工して持ち出すパームとでは,どちらがかんたんかなど考えるまでもない。ワードファイルをほとんどそのまま編集できることと,データの受け渡し時に変換することでそのまま編集という場合より低い互換性ではどちらをとるかというと...。
 “ミニパソコン”とでも言うべきPocketPCと,PDAと言う機械のパーム。その差がなるべくしてなった現状を生み出した。


 私が最初パームを使っていたのに一時期PocketPCを使っていたのはこのような理由からだ。PocketPCの方がむずかしくない。これは大きかった。GENIOを使っていた時も色物なSigmarionIIIを使っていた時も,ハード・OSの設計思想にいらだちを覚えても使っていく上では致命的ではないのでそのお手軽さで使い続けてしまう。PocketPC移行前に使っていたClieTG50は文字入力もしやすかったし持ち運びもしやすくカスタマイズがとても楽しかったが,小説を持ち出すにしても一度MeDocに変換してから持ち出す,と言うことが働き始めた私にとっては鬱陶しく感じだしたから,この以降は私にとっては当然のことだった。



 ただ,私がPDAに求めることはなんなのかというと
1.Web小説を持ち出す
2.おもしろいゲームが外でできる
3.日記等の文字入力が簡単
4.小さくて持ち運びやすい
5.外でネットにつなげられる
 であり,PocketPCでは1と2,4が満たされる。5は無線LANがあったので室内での接続はできるが外ではだめだった。しかし職場では無線LAN が導入されていたので,それほどこまることはなかったが。3を重視して買ったSigIIIだと2と4がある程度犠牲になった。GENIOで動いていたゲームがSigIIIでは動かないものがあったと言うことで2に対しては不満があり,しかし両方を持って動くと言うことは4を大いに阻害することであり,そんなことをするくらいなら〜,と言うことになった。
 そこでこの私の要求を現時点でランク付けしてみるとこうなった。
1.文字入力が簡単
2.小説の持ち出し
3.ゲーム
4.ネット
5.小ささ
 これだとSigIIIを満たしていそうなものなのだ。一番充実したキーボードを持っており,小説も読みやすい。ただ,大きさがネックになった。仕事柄机にずっと座っていることがないので,小ささもランクでは下ではあるが重要性は高く,結局この要求への不満が1や2の優位性を霞ませてしまった。さらに3もなまじGENIOがあるが故に不満度も高くなり,結局SigIIIもだめ,と言うことになった。


 この時点での私の選択肢は
1.TG50の復活
2.GENIOの復活
3.新機種購入
 だった。
 まず1だが,Sonyのパーム撤退があるとはいえ使えるマシンであることには変わりない。私の要求もすべて満たす。ただ,使いやすさ(データの取り回しのしやすさ)という点での不満がある。ネットも携帯がF900iT(Bluetooth)なのであまり問題ない。
 2は文字入力に大いに問題があり,そのほかの要求を満たすもののこれは大きい。
 これだと3を見当するまでもなく1に,となるところなのだが,言葉にできない不満のようなものがTG50にはあった。つまるところ機械のおもしろさ,とでも言えばいいのか,結構完成されていると私は感じているTG50では使って楽しい,と言うことの満足度が低いのだ。これはSigIIIのような使っていて楽しいものを使ったあとでは結構ネックになってしまった。
 そして何より私はTreo650の存在を知ってしまっていたのだ。


 TG50とほぼ同じ事ができ(Bluetoothまで!)右脳先生やたまさんの記事を連日見ていた私にとって,こういう結論はある意味願ってもいないことだった。確かに高い機械だ。それにソフトもそろえようとすると1〜2万はさらにかかるだろう。しかし,使って楽しい,というある意味最上の要求が満たされるであろうこのTreoは無視するのはむずかしかった。GENIOからキーボード付きマシンを,と言う時に候補にも入れたのだがその時はデータの取り回しのしやすさと色物度の高さに目がくらんでSigIIIにしたのだが,それでもTreoへの欲求は募るばかりだった。


 そして結局,右脳先生のページである程度Treoの運用ができるだろうと思えるようになった時点で購入しよう,と言うことになったのだ。PDA工房に在庫があったことも大きい。